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スポーツとデザイン

小林 幹也[デザイナー兼店主]

スポーツもデザインも生活に影響を与える仕事
インテリアデザインを専攻し、現在は日用品や家具のデザイン会社を運営して9年目になります。でも実はもともとサッカーが大好きで、大学は体育系を目指していました。
きっかけは1993年、僕が小学校5年生のときに「Jリーグ」が開幕して、サッカーの神様といわれたジーコが来日したこと。彼のことが知りたくて、南米での試合の様子やドキュメンタリーを見ていると、熱心なサポーターは、応援するチームが勝てば幸福で、負ければ不幸だと話すんですね。そんなふうに、生活に大きな影響が与えられる仕事があるのだと感心しました。
わけあってその道はあきらめましたが、のちにムサビでお世話になる島崎信先生のイスに関する記事を読んで、デザインもスポーツと同じように、生活に影響を与える仕事だと知りました。スポーツとデザインは共通点があるんですね。でも、たとえばサッカーでゴールが決まった瞬間の、あの瞬発力のある感動の伝わり方は、今でもとてもうらやましいと思うときがあります。

選手を知ることで日本のことも知ってもらう
そこで今日は「シェア・ザ・ワールド」と題して、2020年の東京オリンピックへ向けて、選手のデータベースを通して世界を共有しようという具体的な提案を持ってきました。
スポーツは自分がプレーしていなくても、選手のアクションひとつで見る者に瞬間的に感動を与え、気持ちを高揚させます。そうした一体感をより際立たせる仕組みを考えてみました。
オリンピックには細かく分けると400以上の種目があり、多くの選手が参加しています。日本の選手はメディアでも紹介され、生まれや育ち、これまでの成績などのバックグラウンドがわかることによって愛着もわきます。そういう情報を国内だけではなく、ひろく海外にも発信していくことで、世界中の人々にも日本の選手、さらには日本への興味や愛着を育ててほしい。
僕は仕事柄日本全国へ出張するのですが、行ったことのない地方は、やはり印象がないんですね。でもある選手の育った環境としてその地方が紹介されれば、記憶に残るのではないでしょうか。

世界をひとつにつなぐ「場」をつくりたい
もちろん日本の選手だけでなく、参加するすべての選手のデータが公開され、たとえば選手に向けてスマートフォンをかざすと、幼少期からの画像や生まれ育った場所が一挙にダウンロードされたとしたら、面白いでしょうね。
オリンピックを迎えるにあたって、具体的なモノやサービスづくりなど、デザインができることはいろいろあると思います。しかし僕の提案は、4年間がんばってきた選手にしっかり注目したいし、その結果僕たちもオリンピックをより楽しむことができ、世界がひとつになるような機会にしたい、ということです。
僕自身もデザイナーとして、2020年の東京オリンピックにかかわっていきたいと思いますが、せっかくの4年に1度のチャンスなのですから、個々のモノのデザインや断片的なサービスにとどまらず、世界をひとつにつなぐ大きな「場」をつくる、という意識を大切にしたいと考えています。


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東京都生まれ。 
2005年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。
インテリアデザイン会社勤務後、MIKIYA KOBAYASHI DESIGN 設立。
家具、プロダクトからインテリアデザインまで「生活に寄り添ってさりげなく支える」デザインを国内外の企業とともに提案。
2010年 ドイツのiF product design award にて金賞、ドイツred dot award、adc 賞など受賞歴多数。
2011年 自身の事務所にショップ「TAIYOU no SHITA」を東京都目黒区にオープン。
2012年 株式会社小林幹也スタジオ設立。