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脱美大

加藤 晃央[株式会社モーフィング代表取締役]

まったく知らない世界へ飛び込んだ、脱美大
2003年、ムサビに入学してすぐ「にがウーロン」という演劇サークルを立ち上げました。サークルでは「芸術文化学科」だからという理由で、広報や会計などの雑務全般を担当させられてきました。最初は回を重ねるごとにアップした人気も3年次には観客数が伸び悩み、自分のマネージメントやプロデュースの力不足を痛感、お金のことや社会のことなど、もっと自分の知らない世界を勉強しようと考えました。これが僕の「脱美大」です。
飛び込んだ先は、企業に投資を行うようなベンチャーキャピタル。美大生がまったくいない、まさに異世界でした。
彼らの論理的、合理的なコミュニケーションに最初は途方に暮れましたが、意外なことに、彼らは逆に美大生である僕に興味をもってくれました。そしてなんと、デザインの仕事をもらうことになったのです。簡単なロゴ制作でしたが、僕にはデザインはできないので、友人に制作を依頼しました。最初は表面的な形のデザインが主でしたが、次第にブランディングや商品開発、広告戦略へと、求められることが深化していったのです。

社会は今、クリエイティブの価値に気づき始めている
彼らは近くにデザイナーがいなかっただけで、デザインがいらなかったわけではないんですね。しかもそこでの仕事は、デザインがあたりまえの業界以上に喜んでもらえて、意義や喜びがあらためて感じられ、それが起業のきっかけともなりました。
そして2006年、大学4年次に、「美大生を社会へ」という理念を掲げて「モーフィング」を設立します。当初はそんなに仕事もありませんでしたから、「美ナビ展」と名づけた就活展覧会の開催や、全国の美大生でつくるフリーペーパー『Partner』を創刊するなど、自分たち自身で美大生を売り込むアピールをしているうちに、企業からの仕事も増えてきました。
広告をつくる仕事、商業施設の空間演出やワークショップの開催、企業とともに行う商品開発などですが、モーフィングの仕事は、初めてデザイナーと接する企業が多いことが特徴です。それはデザインやクリエイションの価値に、今、社会や企業が気づき始めているということではないでしょうか。

クリエイターがいる環境をもっと増やしたい
現在は企業だけではなく、「人」ということに着目し、一般の人たちがクリエイターと接する体験ができる試みも始めています。昨年から始めた「ギフト・ユア・タイム」というプロジェクトは、クリエイターにつくり方を教えてもらいながら自分自身で作品をつくり、誰かにプレゼントしようというものです。
僕の仕事は、クリエイターのいない環境にクリエイターがいるという状況をつくることです。「デザイン」はどこにでもありますが、クリエイターがいない環境はまだまだ多くあります。もしそこにクリエイターがいれば、その環境はより良くなるはずです。
2020年にはもっとクリエイターのいる環境を増やしたい。冒険心や開拓心をもつクリエイターのみなさんとともに、素敵な2020年を迎えられるよう、がんばっていきたいと思います。


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長野県出まれ。 
2006年 武蔵野美術大学芸術文化学科卒業。
大学3年時、数々の挫折から「脱美大」を図り、独立系ベンチャーキャピタルでインターン。
内定を断り、学部4年時に起業しモーフィングを設立。
2008 年 株式会社ティモテに加入。
2014年 京都を拠点とする世界株式会社を設立。
いくつかの組織間の横断を通じて、立ち位置を模索中。