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「モノを作る」ということ

工芸工業デザイン学科(大嶋 洋二郎、須田 亘、下垣内 岳)

「安さ」と「新しさ」がモノの価値ではない
みなさんは、「安いモノだから、汚れたり壊れたら、すぐ買い直せばいい」、そう思ったことはありませんか? 一昔前と違って、今では良いモノが安く手に入るようになりました。23年前に私が生まれてから今に至るまで、いろいろなモノが急速に発展し、新しいモノがどんどん出てきて、生活を変えていきました。
次々と新しいものが生まれてくる中で、はたして消費者は、ほんとうに必要なモノが何か、欲しいモノは何かを、見失ってはいないでしょうか。「安い」。ただそれだけで、本質的なことを考えることから遠ざけられているのではないでしょうか。
たとえばファスト・ファッション。コヨーテの毛を使ったあるダウン・ジャケットには、密猟されたオオカミの毛が使われていました。材料の不足や高騰によって採算が合わなくなるかもしれない。だからこっそりオオカミの毛を使ってしまおう。そんなモノづくりは、今でも、またファッション以外の分野でも、数多く行われています。そうしてできたモノが、私たちの生活をほんとうに豊かにしてくれるのでしょうか?

モノを大切にするという「豊かさ」
モノづくりに携わっていくのなら、こうした現状を常に把握したうえで、今後のモノづくりをどうしていくべきか、どんなモノをつくっていくべきかを、今一度考えてみてください。
より新しく、より安くというあり方を変えることは容易ではありません。だからこそ、私たちにできる簡単で確実なことから始めてみましょう。
あなたが今持っているもの、それを大切にしてみてください。
新しいモノを手に入れることも喜びですが、今あなたが持っているもの、それをちょっと手入れして長く使っていく。そうすると愛着が芽生えますよね。愛着とともに暮らしていく。それもその人にとって精神的に、もしくはライフスタイルとして「豊か」といえるのではないでしょうか。

消費と生産のサイクルを変えていきたい
ここにいらっしゃる多くはクリエイターだと思いますが、みなさんは同時に消費者でもあります。消費者としては、モノを大切にすることによって生活を豊かにし、クリエイターとしては、長く使わないと見えてこない良い点・悪い点を見つけて、それをヒントとして今後のモノづくりをしてほしい。
新しいモノがどんどん生まれ、生活に入り続けていくことが、いったい誰のためになっているのか、私たちの今後の生活にどういう影響をもたらすのか、今一度考えてみてください。
私たち3人は、こうした激しい消費サイクル、生産サイクルを変えていかなければならないと考えています。そして2020年度をめどに、これからのモノづくりのあり方を模索しながら、それぞれの活動を続けていきたいと考えています。