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考え方を「デザイン」にすれば日本は変わる

デザイン情報学科 (片田 紗葵)

問題解決のプロセスとしてのデザイン
私は、美術の予備校にも通わず、デッサンではなく数学で受験して、この「デザイン情報学科」に入学しました。ですから最初は、絵が描けないことが大変なコンプレックスでした。でも負けず嫌いなので、どうしたら自分なりの活動ができるのかと考えました。そして3年目にしてようやく、これまで学んだこと、考えたこと、これからできることがわかってきたように思います。
最近「デザイン思考」という言葉をよく耳にします。デザインは、ウェブや広告などの視覚的なデザインや、家電製品や建築の見え方にかかわる造形的なデザインという意味のほかに、「新しい機会を見つけるための、問題解決のプロセス」という意味もあるといわれ、デザイン思考はこの意味で用いられています。
私は、デザインを考えるためのある学生団体に運営スタッフとして参加していますが、デザインやデザイン思考を学びたいと考えている学生は、美大生に限らず一般の大学にも数多くいることを知りました。むしろ美大生よりも数が多いくらいです。

デザイン思考という美大生ならではの考え方
デザイン情報学科の1年次、いちばん最初には「課題発見」という名物授業が行われています。そこでは5〜6人のメンバーが集まって仮想の会社をつくり、社会の問題を発見し、解決策を考え、必要であれば製品のプロトタイプをつくって、プレゼンテーションするまでを、1カ月という長い時間をかけて行います。
私たちの「会社」は、勉強嫌いでも楽しくなるノートを提案しました。現在私が参加する学生団体でも、6日間かけてこれと同じ課題に取り組むワークショップを行っています。
デザイン情報学科に入学するまでは、美大は絵を描いたり色や形をつくるデザインの場所だと想像していて、こんなふうに「考え方をデザインする」ことができるなんて、思ってもみませんでした。考え方のデザインなら、絵が描けなくても、造形センスがなくてもできるし、美大ならではの考え方なんですね。

美大生だからこそできること
「絵が描けない」というコンプレックスを抱いていた私は、この「考え方をデザインする」という考え方と出会うことで、自分の居場所を見つけられたような気がしました。
ところが先ほども言ったように、美大生自身は「考え方をデザインする」ということを知らない人が、まだまだ多くいるのです。クリエイティブな発想をもつ私たち美大生自身が、絵を描いたり形をつくるだけではなく、社会の中の問題を見つけ出し、解決を考え、提案する。
2020年の東京オリンピックのさまざまな場面で、そういう「考え方」をする美大生が、たくさん活躍してほしいと願っています。