つくるエネルギーにあふれる「東東京」
新宿、渋谷、六本木など東京の西側に比べ、上野の杜を含む「東東京」には、モノをつくるエネルギーが宿っている気がします。なかでも僕が注目してきたのは、オフィス街の中心である丸の内や大手町から東京藝術大学のある上野の杜に至る動線です。
僕は1997年から、その動線上に位置する末広町で、廃校になった中学校校舎を活用した、「3331 Arts Chiyoda」というアートセンターのプロジェクトを展開してきました。また現在は、やはりこの動線上の神田錦町・東京電機大学跡地に、2017年のアートセンターのオープンを予定する、「TRANS ARTS TOKYO」というプロジェクトを行っています。めざすのは2020年、国内最大規模のアート展「東京ビエンナーレ」の開催です。
都市のスキマに生まれ始めた芸術文化の連携
実際に上野から丸の内まで歩いてみると、上野、秋葉原、丸の内は、それぞれ文化芸術、ポップカルチャー、政治経済の中心地としての密度をもっています。しかしその間、上野・秋葉原間にある末広町、御徒町、谷根千一帯や、秋葉原と丸の内の間の神田や神保町は、密度の低い、いわば「都市のスキマ」となっています。ここに新しいアクティビティを起こすことによって、新しい地域の連携を生み出していきたいと考えています。
すでに「3331 Arts Chiyoda」と、2012年には300人のアーティストと1万人を超える来場者が集まって話題となった「TRANS ARTS TOKYO」は、場所と活動を連鎖させ始めています。アートだけではなく、デザイン、建築、まちづくり、行政に携わるさまざまな人たちの連携が生まれているのです。
逸脱としての「2020年東京ビエンナーレ」の開催
オリンピックが世界のスポーツの祭典とすれば、ビエンナーレは世界の芸術文化の祭典です。これをまず2020年に、同時開催したい。そのためには空間や時間、人と人など、さまざまなスキマをデザインしていく「衝動」が必要です。それはある種ゲリラ的な活動であり、「逸脱」であると言えるかもしれません。
逸脱とは、純粋な自分と向かい合うことから生まれるものだと思います。今日明日をどう生きていくかという切実さを、さらに逸脱したところに、「芸術としかいいようのないもの」は生まれるのではないでしょうか。それは決して一人では生まれない。
私たち人間は、四足歩行から二足歩行に移行して進化してきました。その時一人が立ち上がったのではなく、ある日みんなが一斉に立ち上がったという話を聞きました。この「一斉に」が進化であり、サルからの逸脱だったのではないでしょうか。アートはどこかで、この逸脱を求めています。その逸脱の一つのかたちとして、スキマを含む「東東京」がともに連携し、東京ビエンナーレ開催に向けて一斉に立ち上がる、そんな大きなムーブメントを起こしていきたいと考えています。