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宮崎桂

宮崎桂[サインデザイナー/公益社団法人日本サインデザイン協会 副会長]

広範な領域にわたるサインデザインの仕事
サインというと著名人のサインや、シグナル(合図)、記号など、さまざまな意味がありますが、サインデザインといえば「案内表示」という意味になります。そこには情報をどのように扱いどう表現するかという、情報デザインとグラフィックデザインの要素があり、どのような素材や形で仕上げるかという、プロダクトデザインの要素があります。さらにそのサインが置かれる環境によって、空間デザインや環境デザイン、建築デザインの要素も帯びてきます。このようにサインデザインは、非常に広範で多面的な領域であるということができます。
またその機能によっても、交通案内、街区表示や道しるべ、建築施設の表示、さらに競技やイベントの告知・表示のためのサインと、多種多様に分類されます。とくにオリンピックでは、パラリンピックも併催されますから、どの国の、どんな人にもわかりやすいユニバーサル・デザインも非常に重要になってきます。

地域の個性を活かすサインデザインを考える
誰にでもわかりやすいデザインであるということは、スタンダード(国際標準)であるということです。しかしオリンピックは、ロンドンやリオデジャネイロ、東京と、それぞれの国や地域で開催されています。スタンダードであるだけでは、どこで開催しても同じデザインになってしまいます。ですから、そこに国や都市の個性も表現したい。そうしたオリジナリティをどう表現していくかは、サインデザインにとっての大きな課題だと思います。
私は2013年に、台湾客家文化センターのサインデザインを手がけました。そこでは独特な赤の色を使い、モチーフとしては客家民族の伝統的な凧をイメージして、空中に浮かせるようにデザインしました。そういうところにオリジナリティや、とくに「チャーミング」を表現したいと考えたのです。

東京の「チャーミング」を活かすディレクションを
行政主体の行事は、どうしても生真面目になりがちです。私が考える「チャーミング」とは、ちゃめっ気であり、魅力です。東京の「チャーミング」をうまく捉えて表現する、2020年の東京オリンピックでは、ぜひそうしたサインデザインを実現したい。
今、東京の街はごちゃごちゃです。日本人はとても親切で、それゆえに親切な張り紙で街中が埋め尽くされたり、せっかく新しいサインがつくられても、古いものもそのまま残してしまって、かえってわかりづらくなってしまう。まずこうした状況を整理することが必要ではないかと思います。
もちろんそれぞれのデザインは十分に考えられ、美しいものもあるのですが、全体としてのコーディネートがなされていないことが問題です。2020年の東京オリンピックのサインデザインには、環境全体を考えながら、そこに上手にデザインを配していく、総合的なディレクションがとくに必要とされるのではないかと考えています。