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宮田亮平

宮田亮平[東京藝術大学 学長]

「上野の杜」を芸術文化都市に
一昨年ほど以前から、東京藝術大学が位置するここ「上野の杜」を、芸術特区にしたいと動き始めてきました。
上野の杜の面積は、偶然ですが、ロンドンやパリ、ワシントン、北京、ソウルなどの芸術文化地域とほとんど同じ大きさです。そこに東京国立博物館や国立西洋美術館、東京都美術館、もちろんわが校も含めて20以上の教育・文化施設が集まっていて、その潜在力は非常に高いと考えられます。
そして今度、2020年東京オリンピックの開催が決まりました。私たちはこれをいい機会と捉え、いきなり特区というと言葉だけが一人歩きしてしまいそうでしたので、あえて「芸術文化都市」と言い換えて、多くの人びとに向けたアピールを始めています。

施設間の「壁」を取り払い、オール上野で臨む
上野の杜から文化立国・日本を発信する。しかし現状では、たくさんある施設の間に、高い「壁」があります。物理的な塀もありますが、「心の壁」というものもあって、隣同士の連携がまったくできていません。まず、これを取り払いたい。
具体的には、すべての施設で共通パスが使えるようにし、JRや京成電鉄といった交通機関からもシームレスでつながれば、より多くの人たちが、上野の杜に来てくれるのではないか。現在上野の杜は、年間約1,100万人の施設利用者を迎えていますが、これを最低でも3,000万人を超える、国際的な芸術文化都市にしていきたい。さらに将来的には、この「芸術文化都市」のエリアを、近隣の上野、谷根千、本郷、秋葉原、神保町へと拡大していきたいと考えています。

点から線、線から面、そして日本の顔へ
計画は、まず文部科学大臣にお話しし、文化庁の参加をえた会合をもつなど、国との緊密な連携によって進められています。今年度中にも内容を確定して、それに応じた法整備を進めていく予定です。また、本学のすぐお隣りの都美術館とは、すでに「とびらプロジェクト」などの連携も始まっています。
個々の施設という「点」がつながって「線」となり、上野の杜という「面」となる。この構想によって、日本に新しい芸術文化の顔ができることでしょう。
オリンピックで東京を訪れる国内外の方々が、どこを見れば日本の芸術文化わかるだろうかと迷ったときに、「UENOに来てください、UENOにはすべてがありますよ」と、そう言えるような都市にしていきたい。その時には、東京藝術大学のすべての学生、職員、教員が、日本の芸術文化のコンシェルジュとして、みなさんをご案内したいと考えています。