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宮田亮平

松永真[グラフィックデザイナー/公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会 理事]

格調高く、美しいシンボルマークを「旗」として
50年前の東京オリンピックの成功は、敗戦から立ち直った日本を世界に示し、シンボルマークは国際スポーツ大会の旗を超えた、「近代日本」の象徴として、世界に発信されました。
単にシンボルマークやポスターがあればいいわけではありませんが、2020年には、われわれは世界に向けて、成熟した新しい日本のビジョンを発信しなければなりません。それが質素倹約なのか、アジアの平和なのか、いろいろな旗色があると思いますが、それを日本人自身が認識し、叡智を結集する「意識の旗」とするためにも、まず、格調高く、美しいシンボルマークがほしい。

シンボルは、公正なジャッジの下で生まれてほしい
1964年の東京オリンピックで、亀倉雄策さんがつくられたシンボルマークは、当時の日本の節目として、文化や精神がとてもうまく表現された、すばらしいデザインでした。
現在、われわれをとりまくあらゆるジャンルのテクノロジーは、驚くほどの進化をしていますが、われわれ自身の幸福度はどうでしょうか。見栄を張るのではなく、「幸せの旗」として、国家的事業にふさわしい、美しいシンボルが必要だと思います。
いつの間にか、知らないうちにシンボルマークが生まれてしまうようなことは、ぜひ避けてほしい。日本の伝統文化にふさわしいすぐれたデザインが、納得のいくすぐれたジャッジの下で生まれるように、主催者はいい仕組みを考えてほしいと思います。新しいものを作ることだけでなく、この機に、例えば日本橋の上にかかる無骨極まりない高速道路を消してしまうような、東京の街並を美しくすることも、切なる望みです。

2020年の旗を立てるために必要な「人間力」
ノンフィクション作家・野地秩嘉(のじ・つねよし)さんが2011年に刊行された『TOKYOオリンピック物語』を再読し、過去に経験のない国家的大事業に関わられた方々の熱意と行動に、改めて心から感動を覚えました。1964年、私は東京芸術大学を卒業したばかりの社会人一年生でしたが、後年、亀倉さんにもお会いする機会があり、亀倉さんから直接うかがったオリンピックのお話なども、鮮明に思い出されました。
われわれには、知恵もテクノロジーも、もうすべてあると思います。ただそれを、誰がどのようにジャッジして前に進めていくのか、そこには大きな「人間力」が必要ではないでしょうか。今現在に、亀倉さんや、1964年のオリンピックのデザインを牽引した勝見勝さんのような「人」が、果たしているでしょうか。
野地さんの本には、記録映画の監督を引き受けるにあたって市川崑さんが、亀倉さんのポスターのように美しく撮ればいい、と思ったという話も書かれています。この言葉の重さ、深さを感じます。来るべき2020年の「旗」は何だろうか、それを考えるにあたって、みなさんにもぜひ一読をおすすめしたいと思います。