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田中一雄

田中一雄[環境・プロダクトデザイナー]

オリンピックそのものに対するデザイン
東京はオリンピック招致に勝利しました。今、2020年に向けて、東京は世界の「都市間競争」に勝利しなくてはならないと思っています。そのためにこのフォーラムは何ができるのか。

2つの側面があると思います。1つはオリンピックそのものに対するデザインです。シンボルマークに始まり、メダルやトーチ、東京オリンピックで初めてつくられた競技ピクトシステム、仮設のサインシステムのデザイン。日本のデザイン力そのものの素晴らしさを見せなければいけないと思います。
このフォーラムがデザインを提案するのではありません。何を、どのように決めるか、それを言わなくてはいけないのです。行政におけるものの決め方は、とかくポピュリズムに走りがちです。しかしそれは、時に間違いをおかす。何をどのような形で決めるか。適正なプロセスを経ましょう、プロフェッショナルを尊重しましょう、ということを言わなくてはいけない。それが、オリンピックそのものをデザインすることにとって重要です。

オリンピックを契機として整備されるデザイン
もう1つは、オリンピックを契機として整備されるデザインです。新幹線が開通し、環状放射道路が走り、モノレールが通った。それらは、戦後復興の象徴としてできたものです。2020年は戦後復興ではありません。今回も、インフラ整備は必要ですが、それだけではないのです。
例えば、ロンドン・オリンピックでは、名物のダブルデッカーバスが斬新なデザインで再整備されました。こういう小さなものも都市のイメージをつくっていく大きな力になります。
前回の東京オリンピックでは、ゴミ箱が変わりました。それまでは、コンクリートの箱に木の板がついたゴミ箱がどこの家にもありました。これを見直そうということで、オリンピックのときにできたのが、ポリペールでした。システムは画期的でしたが、あのブルーが日本中にはびこって、間違った日本の風景をつくってしまった。首都高が日本橋を潰したようにです。
私たちはオリンピックを契機として、何をどう作るべきかを提案しなくてはいけません。このフォーラムは、デザイナーの放談会であってはならないのです。議論をしながら、実効性のあるデザインを作る仕組みの提案をしましょう。これから7年間、世界に尊敬される東京をつくっていかなくてはいけないと思っています。