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定村俊満

定村俊満[サインデザイナー]

現在の情報環境における課題
この画像は模様ではなく、東京の鉄道網のチャートです。世界中の人が空港で飛行機を降りて、最初に目にするものです。これは鉄道だけです。道路網、バス網を入れると、完全な迷宮が完成する。ホーム to ワークの便利さも世界一ですが、このネットワークの複雑さも世界一です。
これは東京オリンピックを見に来る人だけでなく、地方から上京する人にとっても巨大な壁となっています。僕は福岡と東京、2つを拠点に活動をしていますが、いまだに東京ではiPhoneの乗り換えアプリが、唯一のガイドです。

こういう状況があるなか、情報の課題がまだあります。
国会議事堂前のサインが、Kokkai Gijidou となっているのも一例です。政令指定都市では、すでにそのレベルの情報改善は終わっていて、東京は遅れています。さらに国交省は、標識には日本語、英語、ピクトグラムの3言語を記して、できれば、韓国語と中国語を足した、5カ国語を推奨しています。5カ国語に加えて、フランス語とイスラム圏の言語を表記しようという動きもあるようです。デジタルサイネージならできるかもしれませんが、それではノイズになるだけで、完全に機能はしません。
私たちサインデザイン協会が1999年に開発したものはJIS化され、ISOへ採用されようとしています。ほとんどの駅にはこのシリーズのピトグラムが採用されていますから、可能性が広がっていると思います。

国際都市に相応しい公共デザインの構築を
一方、オリンピックで開発されるピクトグラムは、施設を中心とする非常に個性の高いものです。お祭りとして盛り上げるためのアイデンティティのためのピクトグラムが必要とされるのです。
お祭りのためのピクトグラムはダイナミックな演出、盛り上げが大切です。ただし、生活基盤のためのピトグラムは、分かりやすさが一番です。その2つをシームレスに繋ぐコンテンツがつくれるかが、この情報計画のポイントになります。
この都市の移動の基盤を支える情報システムと、お祭りを盛り上げる「晴れのデザイン」の情報システムの連続性を、みんながどうつくり上げていくか。そこが問われています。
パラリンピックには、世界中からいろんな障害を持った人が集まります。施設のアクセシビリティと同等に大事なのは、情報のバリアフリーです。視覚に障害がある人に、聴覚に障害のある人にどう情報を伝えるか。それが大きな課題です。
東京という街が、本当の国際都市に変わるチャンス。日本の公共デザインのレベルがデザイナーの力で変わる大きなチャンスです。