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松井龍哉

松井龍哉[ロボットデザイナー]

東京を再定義する
東京オリンピック・パラリンピックは、私たち大勢のデザイナーにとって、1970年の大阪万博と1998年の長野オリンピックに続く、デザイナーが1つの目標に向かってクリエイティブを集結していく非常に画期的なものになると思います。
個々のデザイナーが力を深めて発揮していくためには、ハッキリしていなくてもいいのですが、ある大きなイメージや流れを大まかに共有しておくことが必要です。
その足がかりとして、東京というものを再定義する。いろんな角度や歴史的文脈を考えていくこともできますが、世界の都市の中で、他と飛躍的に違うところにスポットを当てましょう。
そのイメージに基づき、各デザイナーがそれぞれに仕事をして、1つ1つのエレメントを磨いて流動的に繋いでいければ、新しい東京のイメージがつくれると思うのです。
東京が他の都市と圧倒的に違う点。それは人口が世界的に最も多い、3500万人のメガシティだということです。2020年でも、世界で3000万人を超えているのは東京しかありません。ロンドンは1600万人、ニューヨークでも2100万人。人の密度や流れが違います。世界中が都市化していく中で3500万都市の東京が、新しい都市のイメージをつくっていく、モデルになっていけると考えます。
この日、この場からデザインの議論が始まっていく。それぞれのクリエイティブの人たちが、地球上の都市の新しいかたち、メガシティを考える。そういう機会に東京オリンピックをしていく。東京が現実的に持っている部分を、上手にピックアップしていくのが大事と思います。

新しい都市のイメージを大きな枠で捉える
それともう1つ、全然違う観点ですが、私は4年前からオリンピック招致の仕事をしてまいりました。IOCの会長が来日したとき、ロボットがお花を渡す、それが、1つの東京のプレゼンテーションになる。海外でも最終決戦のプレゼンを行い、いわゆるロビー活動の生々しい経験を経てきています。想像を絶するプレッシャーの中、スタッフは必死に仕事をしました。それらの仕事を通じて、日本人の結束力を感じることができました。
個人的に、過去の国家的プロジェクトをやられてきた偉大な先達、それを支えてきた先輩のいろんな意見を聞きました。その結果、私は「国家的プロジェクトの現場には、必ず魔物が潜んでいる」と実感をしました。小さなイメージのミスが、大きな損失を生むという、ヒリヒリするくらい恐ろしい感覚です。
そのような損失を生まないためも、普段住んでいると忘れがちなのですが、東京が大きなメガシティであるというイメージを共有し、1つの目標に進んでいくことが肝心です。
現実の新しい都市のイメージを、大きな枠として捉える。それぞれのデザイナーが深いクリエーションをして、相互作用として繋がれば、新しい都市のイメージが必然的に伝わると思っています。