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暦本純一

暦本純一[ヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究者]

テクノロジーとスポーツとの密接な関係
普段、私は未来のコンピュータやインターフェースをつくっているものです。最近の研究では、知力ではなく身体の健康、ヘルスケアについてもコンピュータのインターフェースとして考えるようになってきました。
実は、テクノロジーとスポーツには、非常に密接な関係があります。衛星中継で試合を見られるようになったように、テクノロジーによってスポーツを見る体験が変わりました。また、サイバネティック・トレーニングと言って、スポーツの練習自体が変わってきています。

スポーツをテクノロジーによって新しくデザインする
もう1つの可能性として、スポーツそのものがテクノロジーによって新しくデザインできるのではないかということがあります。スポーツというのは、数千年前からある古いものも、20世紀にできた新しいスポーツもあります。もし、21世紀にスポーツをデザインするとしたら、どんなものができるのでしょうか。

私はスポーツが得意ではありません。学生時代、理科と美術の成績が5だったのですが、体育は2でしたから。ただし、スポーツというのは、必ずしもトップアスリートのものだけでないと私は考えています。人間には、体力や運動神経、年齢やハンディキャップの有無などで能力に差があります。しかし、スポーツによって身体を使う、競技をするという楽しみは、人類すべてのためにあるものです。
21世紀のスポーツでは、そうした能力の差を超えることができるのではないでしょうか。たとえば、この写真のスポーツは球技に見えますが、球がヘリコプターになっています。
今までのスポーツでは物理法則によるので、上手な人のスマッシュは速いです。しかし、このスポーツでは、上手な人のスマッシュは遅く、上手ではない人のスマッシュは加速するようなこともできるのです。つまり、物理法則そのものを、技術で再デザインできる可能性があります。

テクノロジーとスポーツの融合
皆さんは、映画『スターウォーズ』でフォースの力で宙に浮くボールだとか、同じく『ハリーポッター』で、空中でボールを追い回す「クリッジ」という架空のスポーツを見たことがあるでしょうか。もしかすると、それらが技術によってファンタジーではなく、現実のものになるかもしれません。人の能力を変化させながら、スポーツの世界をつくれるかもしれないのです。

テクノロジーとスポーツの世界が結びつき、皆がスポーツの楽しさを享受できる社会を、日本から発信したい。そのためには、2020年のオリンピックはエポックメイキングな契機となります。テクノロジーとスポーツの融合、私たちはそれを「オーグメンテッド(拡張された)スポーツ」と呼んでいます。
21世紀にスポーツをどう拡張するか。それを私たちは考えていきたいと思っています。